キノコのいる産科病棟の部屋に戻った。
戻る途中であれこれとうまく説明する方法を考えたが、レッドゾーンに張り付いていたレベルメーターは壊れたままなので良いアイデアは出なかった。
キノコは横になりながら眠らずに待っていてくれた。
腹を切ったばかりなので、まだご飯も食べれないしトイレにも行けない。
背中には麻酔の針が刺さったままで点滴につながっているので不自由そうだ。
少し顔色は良くなってきているように感じたが表情はかたい。
そのキノコに撮ってきたポツイチの動画や写真を見せながらポツイチの様子を出来るだけ正直にそして出来るだけはぐらかしながら伝えた。
すごく小さかったこと
すごく可愛いかったこと
キノコに似てること
一生懸命動いてたこと
泣き声もすごくデカかったこと
汚れた羊水を飲んでしまっていたこと
お腹の中で苦しい思いをしたこと
右手から抗生剤が入ってること
へその緒が茶色いこと
呼吸については良くなっていること
感染症のリスクがまだあること
頭のエコーではうっすら白いものが写ったこと
オレにはスゲー元気にみえたこと
心臓にも何やら写ったらしいこと
入院の予定が2週間ということ
など他にも聞いてきたことのすべてを出来るだけ正直にそしてはぐらかしながら話した。
そして最後にやっぱりオレたちの赤ちゃんは天使のようだったよと伝えた。
キノコは矢継ぎ早にしゃべるオレに少しビックリしていた。
狼狽えた様子のオレに「なんかあったのね」と思っただろうがずっと優しい顔で聞いていてくれた。
午後8時30分
検温などのため看護師さんが来たので帰ることにした。
面会時間は7時までなのだから当然だ。
NICUでもらった書類や同意書の控えをテーブルの上に置きキノコとの部屋を出た。
ボーっとしながらも車を運転して家に帰った。
何か張りつめていて体温が少し高くなっているようなそんな感覚がある。
極度のストレスから体を守ろうとしているのかもしれない。
レッドゾーンに張り付いていた思考のレベルメーターも壊れたままだ。
きっとこっちもストレスが原因なのかも。
でも頭の中では勝手にいろいろ考えている。
心音の低下はなぜ起こった?
感染症の原因のきっかけは?
心臓と頭は劣化した精子が原因では?
そんなことがぐるぐると脳内をめぐる。
まだ何も起こってない。
頭では経過観察ということはわかっていても頭の中の別のところが最悪のことを考える。
長い一日だった。